ブレイキンは、音楽に乗せて身体のあらゆるところを使って、回ったり、跳ねたりとアクロバティックな動きを取り入れたダンスです。
回る、跳ねる、簡単な文字で綴られていますが、その本質は人体の限界を遥かに凌駕した動きとなっています。
彼らの肉体と技術は、観る人の度肝を抜くものでしょう。
ブレイキンダンサーの身体の鍛え方や練習方法、そして最前線で闘う日本人選手は一体どのような人物なのでしょうか?
簡潔に紐解いていきたいと思います。
ブレイキンとは?
ブレイキンとはダンススポーツの一種で、日本ではブレイクダンスという名で知られています。
特徴は、他のダンススポーツにはない、音楽担当のDJと司会進行のMCがいることで、基本的に1対1から2対2、もしくは大人数のチーム同士が向き合いながらダンスバトルを行います。
ブレイキンの歴史
ブレイクダンスは1970年代にニューヨークのサウスブロンクス地区のアフリカ系アメリカ人やラテンアメリカ人の若者達によって発展したストリートダンスのスタイルである。
ギャング間の抗争で銃撃戦の代わりにブレイクダンスのバトルで決着をつけようと、DJだった当時のギャングのボスが提唱し、発展に繋がったと言われている。
競技としてのブレイキン(審査基準)
1. 音楽性
音楽のリズムとテンポを掴み、音楽の様々な部分に反応しながらダンスする必要がある。
タイミングを合わせてフリーズをメイクしたり、サウンドや歌詞を上手く表現したり、フットワークで音楽のスピード感を表現したりしなければならない。 “その場に存在する全て” に合わせて踊る能力を意味している。
2. 基礎
各ダンサーのトップロック、ゴーダウン、フットワーク、フリーズ、パワームーブ、トランジションなどの基礎がしっかりしているかどうかをチェックする。
また、全体的なルックスやそれぞれの形、流れなどがクリーンかつシャープであるかどうかもチェックしている。
3. ムーブの難易度
連続トリックや、パワームーブの高難度コンビネーションなど、非常に難しいムーブがメイクできているかどうかを見ていく。
複雑なフットワークのコンビネーションやパターン、フロウなどのレベルもチェックしている。
4. キャラクター / 個性
ブレイキンは非常に難しいムーブが繰り出されるダイナミックなバトルダンスだが、アートとして自分のキャラクターと個性を表現することが重要だ。
ムーブをメイクしつつ、そこにキャラクターと個性を加えて、他のブレイカーとは異なるユニークでパーソナルなダンスができているかどうかをチェックしている。
5. スタイル
個性、体型、柔軟度、筋力、クリエイティビティによって大きく変わってくる、様々なスタイルを目にすることになる。
パワームーブ重視のスタイルや、フットワーク重視のスタイル、柔軟性重視のスタイル、フリーズ重視のスタイルなどが有名だが、それぞれのスタイルをいかに上手く表現されているかをチェックされている。
6. 精度
ダイナミックかつクリーンなムーブができているかどうかをチェックしている。ムーブをミスしたり、クラッシュしたりしてしまうと、精度が低いと判断され、スコアを大きく下げてしまうことになる。
7. 創造性
常にサプライズを求められる、良く知られているムーブ、ステップ、フリーズ、トリック、パワームーブ、トランジションにオリジナルでクリエイティブなアイディアを加えたり、オリジナルのムーブ、ステップ、トリック、フリーズ、トランジション、パワームーブを複雑に組み合わせたオリジナルなスタイルを打ち出したりと、見たことのない、フレッシュでユニークなブレイキンを見せることが重要になる。
8. ラウンドの構成
ダンス全体が理解できる構成になっているか、ムーブがスムーズに繋がっていて、ひとつのストーリーになっているか、ダンス全体に音楽と合ったリズムとフロウが感じられるか、ラウンド構成がしっかり行われているかが重要。
ジャッジ(審査員)は複数人います、ジャッジ自身もそれぞれダンスの好みはあり、評価のポイントも大きく異なるでしょう、それもまたブレイキンの魅力だと感じます。
湯浅亜美選手は自分らしさの独自のスタイルを重要視しているようです。
ブレイキン B-Girl Ami 湯浅亜実
湯浅 亜実(ゆあさ あみ Ami Yuasa 生年月日 1998年 12月11日 生まれ)ブレイクダンスダンサー。
世界大会Red Bull BC One2018およびWDSF世界ブレイキン選手権2019・2022優勝者。
ダンサーネームは「B-Girl Ami」。Good Foot Crew所属。
2024年パリオリンピック新競技ブレイキン 初代金メダリスト。
小柄な体格から表現される力強さ、そしてなめらかに流れるダンスの基礎は
凹凸感のある腹筋とその奥に隠されたインナーマッスルの強靭さだと感じます。
発達した筋肉と言うよりも、綺麗に引き締まった無駄を削ぎ落とした肉体美を感じさせますね
まさに絞られた身体。
身体を支配する力強さとしなやかさを兼ねそなえた印象を感じますね。
湯浅亜美の家族
湯浅亜実さんの家族構成は、父、母、姉の4人家族です。
姉の湯浅亜優(ゆあさ あゆ)さんもダンサーとして活躍しており、亜実さんがダンスを始めるきっかけとなりました、亜実さんは6歳からヒップホップダンスを始め、10歳のときにブレイキンに転向しました。
母親は、亜実さんの練習のために片道2時間かけて車で送迎を行い、深夜の練習にも対応していました。
この献身的なサポートにより、亜実さんは練習に専念することができました。
姉の亜優さんとは、2016年の「Battle of the Year 2016 2 on 2 B-Girl」で共に優勝するなど、姉妹での活躍も目立ちます。また、亜実さんのInstagramには姉妹のツーショットが投稿されており、仲の良さが伺えます。
このように、家族の支えと姉の影響が、湯浅亜実さんのブレイキンダンサーとしての成長に大きく寄与しています。
湯浅亜実の師匠は誰?
湯浅亜実さんの師匠は、ブレイキン界の第一人者である石川勝之さん(ダンサーネーム:KATSU1)です。
彼の指導のもと、亜実さんは技術を磨き、世界的なダンサーへと成長しました。
亜実さんがブレイキンを始めたのは小学5年生のときで、振替レッスンで受けたブレイキンに魅了されたことがきっかけでした。 特に「ウィンドミル」という技に憧れ、すぐに石川さんに師事しました。
レッスンがない日でも自宅前に段ボールを敷いて練習に励み、わずか数週間で高いパフォーマンスを発揮できるようになったといいます。
石川さんは、亜実さんの大舞台でも物怖じしない精神力の強さを高く評価しています。この師弟関係が、亜実さんの世界的な活躍の基盤となりました。
石川勝之コーチの 「楽しめたか?」
金メダルの喜びを置き去りにする快感がブレイキンにはあると感じます。
湯浅亜美の実績
小学1年生の時に、4つ上の姉Ayuの影響でヒップホップを習い始め、5年生の時にブレイキンを始める。
2018年4月、Red Bull BC One(スイス・チューリッヒ)B-girl部門優勝(初代女王)。
2019年、第1回WDSF世界ブレイキン選手権(中国・南京)優勝(初代女王)。
2019年9月、第1回世界アーバン大会(ハンガリー・ブダペスト)優勝(初代女王)。
2020年11月、第2回全日本ブレイキン選手権オープンBGIRL部門優勝。
2021年、第3回WDSF世界ブレイキン選手権(フランス・パリ)準優勝。2連覇を果たせなかったものの、3位の姉・Ayuとともに姉妹での表彰台となる。
2022年7月、国際総合大会ワールドゲームズ(アメリカ・アラバマ州バーミングハム)金メダル。
2022年10月、第4回WDSF世界ブレイキン選手権(韓国・ソウル)2019年に続き2度目の優勝。
2024年、パリオリンピックでオリンピックの新競技となったブレイキンに出場し、8月9日に開催されたブレイキン女子で金メダルを獲得。ブレイキンのオリンピック初代女王となった。
湯浅亜美の身体能力
身長は155cmと小柄、体重は非公開で情報はない、おそらく体脂肪率もかなり低いはずです。
ブレイキンで使われる筋肉は主に身体の内側の筋肉(インナーマッスル)です。
音に合わせて動きを静止させるフリーズ、どのようにして筋肉が使われているのか、画像でも分かるように、腹筋群の締まり具合が素晴らしく、異常な体幹の力は一般人の想像を絶する領域。
トップレベルの選手は皆等しく、想像を絶する体幹力を持っていて、湯浅亜美選手も例外なく脅威の身体能力を持っていることでしょう。
ナチュラルで引き締まった美しい身体は魅力的に感じます。
彼女の存在は唯一無二。
ブレイキンに必要な筋トレ
逆立ち(倒立)の筋トレ
逆立ちの姿勢は、腕や肩など上半身の筋力を鍛えることはもちろん、体幹強化やバランス感覚の向上に大きな効果が期待できます。
倒立運動では、 ・腹筋(体幹)・三角筋(肩)・上腕二頭筋(腕)・上腕三頭筋(腕)・僧帽筋(背中)複数の筋トレ効果があり筋肉の引き締めに大きな効果がある。
倒立筋 (・腹筋・三角筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋・僧帽筋 )
壁倒立
- 壁に背を向けて立ち、2歩進み床に両手をつく。
- 壁に向かって足を片方ずつ上げ、両手を壁の方に寄せていく。
- 壁側に重心を傾け倒立の姿勢を保つ。
- 限界に達する前に2.と1.の逆を行い元の位置へ戻る。
- これを自分の限界に合わせて数セット行う。
逆立ちができないのは、恐怖心がネックになっているケースがほとんどです。
壁を使った逆立ち練習で上下逆さまに慣れることから始めると良いでしょう。
体幹
全てのスポーツで重要な筋肉ではありますが、ブレイキンに関しても同様です、もっと言えば、ある程度の体幹の基礎筋肉がなければブレイキンダンスの形にすらならないでしょう。
ブレイキンの全ての動きに体幹の力は関与している。
腹筋群(腹直筋・腹横筋・腹斜筋)
プランク
- 前腕部と肘を床につけ、うつ伏せになります。前腕部は平行にし、手は軽く握ります。足は腰幅程度に開き、床につけましょう。
- 膝をまっすぐ伸ばしたまま腰を浮かせます。前腕部とつま先で体を支えます。
- 体を一直線にし、姿勢をキープします。
腹斜筋・腰方形筋(インナーマッスル)・中臀筋
サイドプランク
- 横向きになり、手のひらを床につきます。両脚は伸ばして重ねる
- 手のひらと足でカラダを支えるようにして床から浮かせる
- 30秒を目安に姿勢をキープ
- 左右3セットが
※ 正面から見て、頭・肩・腰・膝・踵(かかと)が一直線になるように姿勢を整え、カラダ全体に力を入れて、姿勢を保つようにしましょう。
腸腰筋 (インナーマッスル)
大腰筋(だいようきん)小腰筋(しょうようきん)腸骨筋(ちょうこつきん)の3つからできている。
上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉。
太ももを上げたり、踏み込んだり、重力に抗う抗重力筋の一つです。
男性機能の向上に期待できると言われる筋肉でもある。
レッグレイズ
1. 仰向けに横になり、両手を床につける
2. 床に腰をつけた状態で両足を浮かせる
3. 膝を伸ばしたまま両足を持ち上げていく
4. 床につかないくらいまで両足をゆっくり下ろしていく
1~4までを1日10~20回3セット程度を目安に。
ブレイキン競技者の腹筋を見れば分かりますが、彼らの体幹は生命力の強さを感じさせます。
それも全て基礎の積み重ねの日々があり、努力の結晶だと思います。
湯浅亜美選手の体幹トレーニングも基礎的なものをコツコツと積み上げていることでしょう。
持久力
アスリートにとって持久力は必須です、1回のパフォーマンスを全力で行う、それを何度も行うこと、そしてそれを超えていくことを求められます。
サーキットトレーニング
数種類の筋力トレーニング(無酸素運動)と有酸素運動を交互に繰り返すトレーニングです。 筋トレと有酸素運動の組み合わせなので、コンバインドトレーニングともいいます。 筋トレを30秒ほど行ったら、次に30秒ほどの有酸素運動を行い、ふたたび別の筋トレに移るというサイクルを繰り返します。
一流のアスリートは考え抜かれた独自の組み合わせのサーキットトレーニングを行っています。
我々素人は、種目を減らしたりセット数を減らすなど、無理しないように取り組んでください。
気力と体力の消耗が激しいトレーニングなのでめっちゃ疲れます笑
世界で活躍する選手
2024年 パリオリンピック ブレイキン 男子 金メダリスト
フィリップ・キム(born January 25, 1997) ダンサーネーム「PHIL WIZARD」
2024年 パリオリンピック ブレイキン 男子 銀メダリスト
ダニ・シビル(1988-05-03)ダンサーネーム「DANY DANN」
2024年 パリオリンピック ブレイキン 女子 銅メダリスト
劉清漪(リウ・チー・イー)ダンサーネーム「671」
2024年 パリオリンピック ブレイキン 男子 4位
半井重幸(なからい しげゆき 2002-3-11 )ダンサーネーム Shigekix(シゲキックス)
ブレイキン界のカリスマ半井重幸選手、2024パリオリンではメダルを逃す。
しかしブレイキンでの彼の存在は、メダルの有無や色では計れない。
彼の活躍を心から応援します。
ブレイキン初代女王湯浅亜実 まとめ
1. 技術的な多様性と完成度
湯浅さんは、流れるような基礎動作とクリーンなパワームーブを組み合わせた独自のスタイルを持っています。
特に、フットワークからパワームーブへの滑らかな移行は、彼女の代名詞とも言えます。
この多様性と高い完成度が、競技者としての強みとなっています。
2. 精神的な強さと集中力
湯浅さんは、結果だけにこだわらず、自分らしい踊りを追求する姿勢を持っています。
また、編み物を特技とし、無心に取り組むことで集中力と根気強さを養っています。
この精神的な強さが、競技中のパフォーマンス向上に寄与しています。
3. 家族の支え
母親が深夜の練習にも付き添い、車での送迎を行うなど、家族の献身的なサポートが湯浅さんの成長を支えました。この環境が、彼女の技術向上と精神的安定に大きく寄与しています。
4. 自己表現としてのブレイキンの追求
湯浅さんは、ブレイキンを「自分を表現するアート」と捉え、競技性だけでなくアート性も重視しています。
この姿勢が、彼女の独自性と創造性を高め、競技での成功につながっています。
湯浅亜実選手の魅力はもちろん、競技者ではない、オリジナリティ豊かな彼女の活躍にも目が離せません。
多岐にわたる活躍を心から応援しています。
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